古民家は近年注目を集めており、「古民家ブーム」と呼べるような状態になっています。
古民家について情報発信しているインフルエンサーもいて、テレビや雑誌などでも頻繁に取り上げられています。
そのため古民家への移住や、「古民家を買ってDIYやリノベーションしてみたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
魅力的な古民家ですが、移住や引っ越しにあたっては躊躇してしまうポイントも。
今回は古民家に興味がある350人にアンケートを実施し、「古民家に憧れる理由」や「古民家に住む際の不安」について聞きました。
【調査概要】
- 調査対象:古民家に興味がある人
- 調査期間:2024年11月8日~22日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:350人(女性205人/男性145人)
- 回答者の年代:10代 0.9%/20代 13.4%/30代 27.7%/40代 28.6%/50代 20.3%/60代以上 9.1%
古民家に憧れる理由1位は「風情がある」
古民家に興味がある350人に「古民家に憧れる理由」を聞いたところ、1位は「風情がある(48.0%)」で、半数近くの人から票を集めました。
2位「落ち着いて暮らせる(27.7%)」も3割近くと、多くの票を集めています。
「風情」「落ち着き」など、古民家のもつ雰囲気に惹かれている人が多いとわかります。
「広さ」「リノベーション」「コスト」は古民家でなくても選択肢がありますが、「古いものが醸し出す落ち着いた雰囲気」は古民家ならではの魅力です。
1位 風情がある
- 和の独特な雰囲気を味わいたい(10代 女性)
- 風情があって、レトロな感じが好きです(30代 女性)
- 古民家には長い年月を経てきた歴史があり、独特の雰囲気や風合いには魅力があります。昔の人々の暮らしや文化が息づいているような感覚があり、物語を感じられる点に惹かれます(40代 男性)
1位は「風情がある」でした。
「レトロな和の雰囲気」「受け継がれてきた歴史・伝統」など、新築戸建てや最新のマンションにはない、古民家独特の雰囲気に魅力を感じている人が多いとわかります。
具体的には「古い木材の柱や梁」「和室」「使い込まれた建具」などが、古民家ならではの風情を醸し出します。
「古民家カフェに魅力を感じたのがきっかけ」という人も複数いて、古民家や古民家を改装した店舗に実際行ってみて、興味をもつようになった人も多いとわかりました。
2位 落ち着いて暮らせる
- ゆったりとした雰囲気の中で過ごすのが好きだから(20代 男性)
- 落ち着いた雰囲気が好き。実家のような雰囲気で、癒やされそう(40代 女性)
- 落ち着いた雰囲気で、今の自分のスタイルとは真逆のゆっくりとした時間で生活できる(50代 男性)
「落ち着いて暮らせる」が2位でした。
「古民家は落ち着く」と感じている人も多いようです。
落ち着く理由としては「実家や祖父母宅のような雰囲気がある」「古いから」「木のぬくもりを感じるから」などが挙がりました。
「多少の不便を感じながら暮らすことで、都会であっても落ち着いた暮らしができそう」という意見も。
古民家そのものというよりも、古民家で暮らすライフスタイルや、昔ながらの暮らしに憧れている人もいるとわかりました。
3位 広い
- 開放感のある窓や、広いお庭のイメージがあるからです(30代 女性)
- 都内の3階建てに住んでいるので、広い平屋に憧れる。ドラマやアニメで観るような縁側が欲しい(40代 女性)
- 父と母の実家は古民家風の家です。天井がとても高く、何より部屋の広さがあってゆったりと過ごせる印象です(50代 男性)
「広い」が3位。
複数世代の同居を前提として建てられた古民家は、部屋数が多く間取りに余裕があります。
和室が多い家なら、襖を開けることで部屋がつながるので、広々とした空間にすることも可能。
「友達を呼んで広々した空間で宴会したい」「子どもたちを自由に走り回らせたい」など、広い空間で明確にやりたいことがある人もいます。
また現在狭い家や3階建てに住んでいる反動で、平屋など「横に広い家」を求めている人もいるとわかりました。
4位 リノベーションできる
- リノベーションのしがいがあるから(30代 女性)
- よくテレビなどで観るように、自分の住みやすいようにリフォームをしてみたい(50代 女性)
- 自分で思うように改装できそう(60代以上 男性)
4位は「リノベーションできる」です。
SNSやテレビ・雑誌などでは、よく「古い家をDIYでリノベーションして住む」といった事例が紹介されています。
感化されて、古民家を購入してリノベーションしてみたいと感じている人も多くなりました。
「昔のものも残しつつリノベーションをすることで、デザイン性のある雰囲気を楽しめる」という声も。
古民家ならではのリノベーションや、古いものと新しいものの融合に興味をもっている人もいるとわかりました。
5位 コストを抑えられる
- 家賃がとても安いこと(20代 男性)
- 新築はお金がかかるし、古いものの有効活用はいいことだと思うから(30代 男性)
- 地方の古民家なら資産価値が低いので、安く購入できる(40代 女性)
5位は「コストを抑えられる」です。
購入するにしろ借りるにしろ、古い家は安く済むことが多いです。
古民家が該当する「木造戸建て」は、一般的に資産価値が下がりやすいからですね。
地方や郊外であれば、都市部より土地も安く購入できます。
そのため「リノベーション費用を含めて考えても、安いと思う」という意見もありました。
古民家に住むことの不安1位は「災害に弱い」
古民家に住むことの不安としてもっとも多かった回答は「災害に弱い(29.7%)」でした。
2位「断熱性が低い(19.1%)」、3位「耐久性が低い(18.0%)」、4位「虫が出る(14.6%)」が続きます。
耐震性や断熱性など、住宅性能の面で不安を感じている人が多いとわかります。
また家が古いことから、メンテナンスにかかる費用や手間を心配している人も多くなりました。
1位 災害に弱い
- やはり築年数が長いので、台風や地震などの自然災害に耐えられるかどうかは不安です(20代 女性)
- 耐震が不安です。傾くだけならいいのですが(40代 女性)
- 基礎がしっかりしているといっても、大きな地震が発生したときの不安はある(60代以上 男性)
1位は「災害に弱い」でした。
古民家は古い木造建築であることから、とくに地震による被害を心配している人が多くなっています。
建築基準法改正以前に建てられた古民家は、現行の耐震基準を満たしていない可能性が高いからです。
また屋根の劣化が進んでいると、台風や大雨災害で雨漏りなどの被害が発生することも考えられます。
2位 断熱性が低い
- 断熱材など、寒さ・暑さ対策には不安があります(30代 女性)
- 今の高気密高断熱住宅に比べたら、エアコンなどの空調機器が効きにくいと思うので、電気代がかかりそう(40代 男性)
- 隙間風が入って暖房費がかかりそう(50代 女性)
「断熱性が低い」が2位でした。
古民家は湿気を逃がすことを重視した開放的なつくりであることが多く、窓が多いため断熱性は低いです。
また窓も断熱性能の低いシングルガラスが一般的。
古民家に多い土壁も、現在よく使われている断熱材のグラスウールより、断熱性能が低くなっています。
そのため断熱性能を不安視している人も多数。
断熱性が低いと冷暖房効率が落ちるので、光熱費を心配している人も多くいました。
3位 耐久性が低い
- 老朽化がどこまで進んでいるのか、耐久性に不安があります(30代 男性)
- 壊れてしまわないかどうか(40代 女性)
- シロアリや劣化などによる強度の低下が心配(50代 男性)
「耐久性が低い」が3位。
築年数が経っているため、「家がいつまでもつのか」「シロアリの被害にあっていないか」を心配する人も多くなりました。
確認できない内部の傷みが隠れている可能性もあるので、慎重になる人が多いと推測できます。
「自分では判断できないので、しっかり調査してくれる業者に頼みたいが、業者の見極めも難しい」という声もありました。
4位 虫が出る
- 虫などが大量発生してしまったときの対処法は事前に知っておきたい(20代 女性)
- 昔、伯父宅の軒天に大きなハチの巣があったことを覚えています。害虫や害獣の対策や雑草の管理を自分で行うには知識や経験がなく、不安を感じます(30代 男性)
- 虫がたくさん出そうで怖いです(40代 女性)
4位は「虫が出る」です。
虫が苦手な人が気にするのが、「古民家は虫が出やすい」という点です。
開放的なつくりなので虫が入り込みやすかったり、木材の中に巣があったりするからです。
周辺の環境や季節によって、都市部やマンションではあまり見かけない虫も発生します。
虫が発生すると「怖い」といった精神的なダメージのほか、駆除の手間もかかります。
5位 防犯性が低い
- 鍵などの戸締まりがゆるくなってしまうと思うので、空き巣などの被害に遭わないか心配(20代 女性)
- セキュリティー面での不安はある(40代 女性)
- お金を持っていなくてもお金を持っていそうに見えて、強盗が狙いやすそう(50代 男性)
5位は「防犯性が低い」です。
古民家は基本的に開放的で出入りできる場所が多く、侵入しやすいつくりです。
またドアや窓が古いままだと、「サムターン回し対策がない」「鍵が旧式」などの問題があり、防犯性は低くなってしまいます。
そのため「最近は強盗事件が多いし不安」と感じている人も多くなりました。
6位 コストがかかる
- 必要以上の広さの土地を購入したせいで税金が多くとられないか、知識がないので心配になります(30代 男性)
- リノベーションは必須だと思うのですが、「雰囲気のある古民家のリノベーションは物件の値段以上に高額」というお話も聞くので、躊躇してしまいます(30代 女性)
- 改築費、維持費などのお金です。屋根などは定期的にやらないといけないイメージがあるし、内装はDIYできても屋根は無理だと思うので(40代 女性)
6位は「コストがかかる」でした。
古民家自体は安く購入できても、リノベーションや維持にコストがかかることを心配している人もいました。
こだわってリノベーションしようと思うと、当然費用は高くなります。
また状態が悪い物件だと、工事中に不具合が発見されて、想定以上にコストがかさむことも。
古民家に限らず、土地と家を購入すると税金も課されます。
7位 管理の手間
- 手入れが大変だろうなという不安があります(30代 女性)
- メンテナンス。兄の別荘での苦労を聞いていると怖くなる(40代 女性)
- 手入れをきちんとしないと、傷みがひどくなったり、美しく保てなかったりすると思います(50代 女性)
7位になったのは「管理の手間」です。
広い古民家を購入すると、掃除する範囲やかかる時間は増えます。
むき出しの梁がある場合にはホコリが溜まるので、適宜ホコリを落とす必要があります。
また庭があれば雑草の手入れなども必要です。
少し違った視点で、「修繕したいときに、対応できる業者さんを見つけられるのか不安」という声もありました。
古い家だと、入れたい設備を入れられないなど、「手をかけたいけど難しい」といった事態になることもあります。
8位 住宅設備が弱い
- 古い設備だと生活面で支障をきたしそう(20代 女性)
- 水道や電気関連が壊れていないか不安です(30代 男性)
- トイレやキッチンなど、水回りが古くて使い勝手が悪そう(30代 女性)
「住宅設備が弱い」が8位に入りました。
とくにトイレやお風呂など、水回り設備の使いにくさに不安を感じている人も多いとわかりました。
例えば和式トイレですと使いにくい人も多いでしょうし、タイル張りの浴室だと寒くてリラックスできない人もいます。
また気づきにくい部分として、古い家だとコンセントの数が少ないといった問題点もあります。
「古民家に住むなら郊外」が4割以上
古民家に住むならどのエリアがいいかを聞いたところ、もっとも多かったのは「郊外(42.0%)」でした。
「都市部と地方の中間にあたり、商業施設や交通機関も不便ではない」というイメージから選んでいる人が多いと推測できます。
なお古民家に興味がある理由としては、コストや広さを挙げた人も多くいました。
そのため郊外や地方のほうが、「購入価格の低い家が多い」「間取りや敷地の広さを確保できる」と考えている人も多いと考えられます。
古民家に住む際にリノベーションしたいのは「水回り」
古民家に住む際にリノベーションしたいところの圧倒的1位は「水回り(59.4%)」で、6割近くの人が回答しました。
2位「災害対策(28.0%)」も3割近くを集めています。
3位「断熱対策(8.3%)」、4位「防犯対策(4.9%)」、5位「床(4.0%)」でした。
多かったのは「水回り」「断熱」など、日常生活の快適性に関わる回答です。
住宅設備や断熱材は進化していますから、「いいものは取り入れたい」という人が多いとわかりました。
1位 水回り
- 水回りが汚いのは耐えられないので、水回りは必ずリノベしたいです(30代 男性)
- お風呂とトイレ。他はキッチン含めて古い雰囲気も楽しめるし、昔ながらの生活に近いスタイルで暮らしたいけど、お風呂は薪ではなく自動で沸いて欲しい。トイレも、最新じゃなくても水洗で手入れしやすいものにしたいです(40代 女性)
- トイレと風呂と台所は、清潔さや使い勝手の良さなどのために改装したいと思う(50代 男性)
1位は「水回り」でした。
水回りについては、快適性や清潔性を重視して、リノベーションしたいと考えている人が多数。
水回りは毎日使うので、使いにくいとかなりストレスが溜まるからですね。
水回りの場所別では、「トイレ」と答えた人が多くなっています。
また「老後のことを考えて」という意見もあったことから、水回りのバリアフリー面を考慮している人もいると推測できます。
2位 災害対策
- 木造建築が多いと思うので、耐震強度を増したい(20代 男性)
- 昨今災害が多いので、耐震性は高めたいと思います。柱が古くなっていないかや、基礎がしっかりしているのかは心配なので、地震対策になるようなリノベーションをして補強したいです(30代 女性)
- 災害に対して不安があるので、耐震・耐火の補強をしたい(40代 女性)
「災害対策」が2位でした。
古民家は古い木造建築であることから、とくに耐震補強を考えている人が多くなりました。
具体的な工事としては「耐力壁」「柱・梁・基礎の補強」「屋根の軽量化」などがあります。
ただし建物の強度や建物に関する資料の有無によっては、耐震補強工事ができないことも。
そのため「耐震補強するなら建て替えになりそう」という意見もありました。
3位 断熱対策
- 古民家の寒さは厳しいので、耐熱対策をしっかりとしたい(30代 女性)
- 古民家は断熱性能が低いので、冬の寒さや夏の暑さが厳しい。断熱材の追加や窓の交換を行うことで快適な住環境にして、さらに光熱費の削減もしたい(40代 男性)
- 防寒対策がされていないと思うので、窓を二重サッシにしたり壁に断熱材を入れたりしたい(50代 女性)
「断熱対策」が3位。
具体的な内容としては「壁に断熱材を入れる」「二重窓にする」などが挙がっています。
古民家は「囲炉裏」「火鉢」といった局所的な暖房を想定したつくりなので、エアコンやストーブのように部屋全体を温める暖房とは相性が悪いです。
そのため断熱性が低い状態でエアコンやストーブなどの冷暖房機器を使っても、効きが悪く、光熱費も高くなると予想されます。
古民家でエアコンやストーブを使うなら、断熱性能を高めるためのリノベーションはしておいたほうがいいでしょう。
4位 防犯対策
- 防犯面が心配なので、鍵を最新のものに変えたい(30代 女性)
- 比較的簡単に忍び込めそうなので、少なくとも窓やドアは防犯対策をしっかりしたいです(30代 男性)
- 防犯面が気になるので、とりあえず玄関や窓はしっかり防犯対策をしておきたい(50代 女性)
4位は「防犯対策」です。
具体的な場所やアイテムとしては「窓」「玄関」「防犯カメラ」が挙がりました。
補助錠の設置などは、古民家でも比較的簡単にできます。
空き巣などの犯罪者は明るい場所を嫌いますので、センサーライトの設置などもおすすめです。
また警備会社の中には、古民家専用プランを用意している会社もあります。
5位 床
- 床が抜けないように補強しておきたい(30代 女性)
- 晩年を古民家で過ごしたいので、ベッドや椅子の生活にもできる床にしたい。畳のほうが趣はあるが、動けなくなったときに家を手放すのは嫌なので、老人が住むことを考慮した設計にしたい(40代 女性)
- 床下からの湿気による損害が不安なので、床下のリノベーションをしたい(50代 男性)
5位は「床」です。
主なパターンは「床や床下の補強をしたい」と「畳をフローリングにしたい」のふたつでした。
古くて状態の悪い家だと、湿気などが原因で、床がたわんだり抜けたりすることもありますので、補強しておくと安心です。
また「将来はリビングにベッドを置く」といった生活を想定して、畳をフローリングに変えておきたいという人もいました。
まとめ
古民家には古木や建築様式が醸し出す独特の風情があります。
一方で古い木造建築であることから、耐震性や耐久性に不安を感じている人も多くなりました。
「伝統工法の古民家は免震構造になっている」と言われますが、購入や移住に当たっては古民家鑑定士などの専門家に建物の状態を判断してもらう必要があるでしょう。
また古いままの水回り設備は使いにくいことも多く、バリアフリーの面でも不安があるので、適切なリフォーム・リノベーションを施すのがおすすめです。
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