都会で生活している人のなかには、地方移住に憧れを抱く人も多いのではないでしょうか。
メディアなどで、地方に移住した方のライフスタイルを目にし、うらやましいと感じることもあるかもしれません。
今回は地方移住に興味がある306人を対象に、「地方移住でしたいこと」や「地方移住する際に譲れない条件」についてアンケート調査を行いました。
【調査概要】
- 調査対象:地方移住に興味がある人
- 調査期間:2024年11月8日~22日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:306人(女性172人/男性134人)
- 回答者の年代:20代 18.3%/30代 30.4%/40代 25.8%/50代 18.3%/60代以上 7.2%
地方移住に興味をもったきっかけは「住居費・生活費の負担が大きい」
- 全てにお金がかかることに嫌気がさしたから(30代 男性)
- 地方の方が家賃や物価が安く、経済的に楽になれる(40代 男性)
- 家賃のために働いている気がして、あほらしくなってきたため(40代 女性)
- 都会のせかせかした生活にストレスを感じるようになったから(50代 男性)
- 人に疲れるので、時間の流れをゆっくり感じながら過ごしたいから。最近地方移住している人の記事などを見て(30代 女性)
- 子どもがのびのびと過ごせそう。また現在地方のほうが子育ての支援などに力を入れているから(30代 女性)
- リモートワークが普及してきたここ数年のうちに地方に移住した人が職場に何人かおり、話を聞くうちに興味をもつようになりました(30代 女性)
地方移住に興味をもったきっかけとしても最も多かった回答は、「住居費・生活費の負担が大きい(19.0%)」でした。
2位は「都会や人混みに疲れた(16.7%)」、3位「自然豊かな環境への憧れ(14.4%)」、4位「ゆったりとした生活への憧れ(11.8%)」と続きます。
「生活にコストがかかる」「人が多い」「せかせかしている」といった都会特有の心理的・金銭的なストレスから解放されたいという気持ちが、地方移住に興味をもつきっかけになっていることがわかります。
またリモートワークの普及により、働き盛りの世代が都市部から地方へ移住することが現実的な選択肢となったことも、理由の一つと言えるでしょう。
地方移住でしたいこと1位は「農作物の栽培」
地方移住でしたいことのダントツは「農作物の栽培(53.6%)」で、全体の半数以上を占めました。
2位は「自然を満喫できる暮らし(8.2%)」、3位は「アウトドア活動(7.8%)」となっています。
自分で食べるものをできるだけ自分で作る「自給自足」や、自然に囲まれた暮らしなど、都会では実現が難しいライフスタイルを望んでいる人が多いことが伺えます。
1位 農作物の栽培
- 自宅で野菜を育てて自分で育てた野菜を食べたい(20代 男性)
- 家庭菜園でいろいろな野菜を作ってみたい。今はマンションなのでベランダでプチトマトをやっているが、太陽の当たる広い畑でスイカやトウモロコシなども育ててみたい(40代 男性)
- どこまで自給自足できるか、菜園をやってみたいです(50代 女性)
- 自分の畑を作ってみたい(50代 男性)
「庭や畑で野菜を育てたい」という声が多く寄せられました。
「自分の育てた野菜を食べたい」という人のほか、農作業自体を癒やしや楽しみとして行いたいという人も。
回答者のなかには、現在も家庭菜園やプランターでの野菜栽培をしている人もいましたが、「もっと広い敷地で本格的に育てたい」という声が多く寄せられました。
また「食費を抑えたい」という理由から、自給自足生活に挑戦したいという人も多数いました。
2位 自然を満喫できる暮らし
- 自然に囲まれた場所で毎日散歩したい(20代 男性)
- 子どもたちを自然いっぱいのところで遊ばせたい(30代 女性)
- 山や川や海に接することができる活動を日々やってみたいです(60代以上 男性)
- 日々の生活の中で自然を感じながらゆったりしたいです(30代 男性)
「自然を満喫できる暮らしがしたい」という声も多数寄せられました。
現在は、都会でも緑地化が進み、緑豊かな広々とした公園も増えています。
しかし地方にある「人工的に整備されたものではない自然」の魅力はまた別物です。
緑の多い場所にわざわざ足を運ばなくても、日常の生活空間が自然で満たされている地方に憧れをもつ人は多いでしょう。
子どもを自然のなかでのびのびと育てたいという親御さんの声も多く寄せられています。
3位 アウトドア活動
- ウォーキング、キャンプ等を楽しみたい(50代 女性)
- 釣り三昧(20代 男性)
- 海の近くでマリンスポーツにチャレンジしてみたいです(50代 男性)
- 住んでる周辺の山でのキャンプなど、ゆったりとした時間を過ごしたい(20代 女性)
都市部に住んでいると、海や山などでアウトドア活動を楽しむためには、「移動」や「金銭面」でのハードルがあります。
遠方であれば、交通費や宿泊費がかかりますし、日帰りできない場所であれば仕事の休みを調整する必要もあるでしょう。
一方、海・山・川などが近い地方であれば、日常生活の延長として気軽にアウトドア活動を楽しめます。
同3位 庭を活かした暮らし
- 自分の家の庭でバーべキューをしてみたい(50代 男性)
- 友達を呼んで、自宅の庭やガレージでバーベキューや花火をしたい(40代 女性)
- 庭を自然いっぱいにして夕方庭を見ながらお茶したい(20代 女性)
- 広い庭でゴルフのアプローチ練習をしたい(30代 男性)
広い庭だからこそできることをやってみたいという人も。
とくにバーベキューをしたいという声が目立ちました。
都市部では、たとえ自宅の庭であってもバーベキューは近隣住人に嫌がられる可能性が高いです。
隣家との距離が近く、煙やニオイの問題があるからです。
また、都市部の一般的な戸建てやマンションの庭はそれほど大きくないため、ガーデニングや家庭菜園なども小規模なものしかできないケースも。
庭を活かせる暮らしは、都会に住む人の憧れになっているようです。
5位 広い家・庭のある家に住む
- 庭のある一軒家を建てたい(20代 女性)
- 平屋で生活をしたい(40代 女性)
- 夜は星を眺められるような庭の大きな家に住みたい(30代 女性)
都市部は地価や賃料が高いため、「広い一軒家を購入したい」「広いマンションに住みたい」と思っても実現が難しいケースもあるでしょう。
またマンションの場合は、庭のない物件が大半です。
一方、地方であれば、都市部の半分~1/3程度の予算で庭付き一戸建ての購入や広いマンションの賃貸が可能になるエリアも。
そのため、広い家や庭があるマイホームに憧れる人も多くなりました。
6位 リモートワークの実現
- 自給自足をしながら、パソコンさえあればいつでもどこでも稼げるようにする(20代 男性)
- 畑仕事、日曜大工をしながらフリーランスとしてリモートワークをして生計を立てたい(30代 女性)
- 地方からでも在宅でできるリモートワークをしながら、野菜やフルーツなどの栽培がしたい(30代 女性)
リモートワークが普及したことで、働く場所にしばられないライフスタイルが可能になりました。
その結果、「どこにいても仕事ができるのに、わざわざ都市部に住み続ける必要性を感じない」と考える人も増えています。
また口コミでは、「自給自足をしながらリモートワークをしたい」という声も目立ちます。
生活費のかからない地方であれば、「リモートワークの収入と、畑仕事や家庭菜園などの半自給自足を組み合わせて暮らせそう」と考える人も多いようです。
7位 ペットとの暮らし
- 犬や猫を好きなだけお迎えしてみたいです(50代 男性)
- 大型犬を飼って庭で遊んだり、自然の多いところへ散歩に連れて行きたいです(30代 女性)
- そこでしか飼えない動物を飼育したいです(40代 男性)
地方の広い家や隣家との距離がある環境では、ペットを気兼ねなく飼えます。
とくに、鳴き声や足音などを気にする必要がないことから、「大型犬を飼いたい」「たくさんの種類を飼いたい」という声が多く寄せられました。
また、庭があればペットをのびのびと遊ばせることができ、自然豊かな環境での散歩も楽しめますね。
地方移住する際に譲れない条件1位は「買い物に不便がない」
「地方移住する際に譲れない条件」を聞いたところ、1位は「買い物に不便がない(33.3%)」でした。
2位は「医療機関が充実・近い(19.6%)」、3位「教育施設が整っている(10.8%)」、4位「交通インフラが整っている(7.5%)」、5位「地域住民との程よい関わり(4.6%)」という結果になりました。
買い物や医療機関、交通インフラなど、日常生活が不便にならない環境は最低限必要と考える人が多いとわかります。
都会とは異なる環境を求めて地方移住を検討しているものの、生活の利便性を犠牲にすることは難しいと感じていることが伺えます。
1位 買い物に不便がない
- スーパーとコンビニが歩いて行ける場所にある(50代 男性)
- 車が運転できないので、自転車で行ける範囲にスーパーなど生活に必要なものが揃う店舗があるといい(40代 女性)
- 独り身で車がないので、日常生活品を配達してくれるスーパーなどがほしいです(40代 男性)
スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、食料品や日用品を買える店舗が近くにあることを条件に挙げる人が多くいました。
自給自足を希望している人でも、すべての食材を自分でまかなうことは難しく、またトイレットペーパーや洗剤などの生活必需品を購入する機会は少なくありません。
そのため、最低限の買い物ができる環境は必要と感じているようです。
「近く」の定義は人それぞれですが、「徒歩圏内」「自転車で行ける範囲」と回答した人が目立ちました。
2位 医療機関が充実・近い
- 医療関連の充実。年齢を重ねていくうえで非常に重要(60代以上 女性)
- 高度な医療が受けられる大きい総合病院があること(20代 女性)
- 大人も子どもも診てもらえる病院が近くにあること(30代 女性)
- 病院が充実していること。やはり、高齢者になると病院は必要なので(50代 女性)
体調を崩したり病気になったりしたとき、病院が近くにないのは不安ですよね。
当アンケートでは「医療機関の充実」を条件に挙げた人の7割近くが40代以上だったことから、とくに中高年層で医療環境を重視する傾向が強いとわかります。
年齢を経るほど健康面での不安が増すため、医療機関の必要性を感じるのでしょう。
また、「家族でかかれる病院」「大きい病院」「総合病院」などを希望する声も多いことから、幅広い診療科や高度な医療が受けられる医療機関を求めていることも伺えます。
3位 教育施設が整っている
- 子どもの学校が徒歩あるいは自転車で通える範囲内にあること(40代 男性)
- 最低限、高校までは子どもの学校が揃っていること(30代 女性)
- 子どもが通える教育環境の充実(30代 男性)
お子さんがいる人からは、小学校、中学校、高校といった教育施設が整っていることを条件に挙げている人も目立ちました。
学校が遠いと、通学に時間がかかるためお子さんに負担がかかります。
また親御さんにとっても、通学中の安全面に関する不安や、送迎が必要になる手間といった問題が生じる可能性があるからでしょう。
4位 交通インフラが整っている
- 車がなくてもある程度の生活ができる、交通機関が充実している(50代 女性)
- 子どもが自分で気軽に移動できる手段があること。バスや電車など公共のもの(20代 女性)
- 車の運転をする必要がない環境なこと(40代 女性)
電車、バスといった交通インフラが整っていることを条件に挙げた人も。
とくに徒歩圏内にスーパーやコンビニ・ドラッグストアなどがある生活に慣れている人にとって、車がなければ生活が成り立たない環境は不便に感じるでしょう。
また、「運転が苦手」「免許返納後の生活に不安がある」といった理由から交通公共機関が充実している環境を求める人もいました。
5位 地域住民との程よい関わり
- 新しい移住者に対して排他的な雰囲気がなく、老若男女問わずに交流があること(20代 男性)
- 周りの家が快く受け入れてくれる環境のあるところ(40代 男性)
- 近所付き合いが濃すぎないこと(30代 女性)
地域住民とどのように関わりたいかは、人それぞれです。
積極的に交流したいと思う人もいれば、近所付き合いが濃すぎない関係を望む人もいました。
また、移住者に対して地域住民が友好的かどうかを気にしている人も多く見られます。
地方移住者の体験談には「移住者を受け入れない排他的な雰囲気」について言及するものもあることから、不安を感じる人もいるのでしょう。
地方移住したい都道府県1位は「長野県」
具体的に移住したい都道府県を聞いたところ、1位は「長野県(18.0%)」、2位「沖縄県(11.1%)」、3位「静岡県(9.5%)」という結果になりました。
全体として、自然環境の良さと暮らしやすさが両立できるエリアがランクインしています。
1位の長野県は「移住支援金」などが充実していることも、移住先として選ばれる理由の一つと考えられます。
また、沖縄県や静岡県などは温暖なことから、「気候がいい場所に移住したい」という方に人気です。
自然を満喫できることに加え、快適な生活環境も移住先選びのポイントになっているようです。
まとめ
都会生活での金銭的な負担や心理的なストレスから、地方移住に興味をもつ人が多数。
とくに「農作物の栽培をして自給自足生活をしたい」「自然を満喫したい」といった、都会では実現が難しいライフスタイルを求める人が多いとわかりました。
また、「都会や人混みに疲れた」「ゆったりした生活に憧れる」「広い家に住みたい」といった声からは、現在の窮屈な暮らしから解放されたいという思いも読み取れます。
一方で「地方移住する際に譲れない条件」としては、生活インフラや交通インフラの充実が挙げられていることから、移住先の利便性を重視する思いも伺えます。
地方移住を成功させるには、理想の暮らしと生活インフラのバランスが重要です。
移住先について事前によく調べ、ライフスタイルと合う環境を選ぶことで、満足度の高い移住生活が実現できると言えそうです。
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